買ったきっかけ:
「苦しみから立ち上がり、もういちど人生を歩き出す人々の姿を鮮やかに切り取った短編集」 - ブックカバーのうたい文句につられて(オッと失礼!?)、涙を出せるかなぁと思い、手にすることにしました。
感想:
7つの短編で一番のお気に入りは「青いエグジット」。
エグジットとはダイビング用語で 海から陸に上がる ことをいうそうだ。「青い出口」、閉塞した状況からの脱出口とかいう意味合いをこめているのだろう。
黒、灰色、そして、青、白と色彩感をもった作品だ。
事故で片足を失った清人、左遷され 「もうこれから自分にはいいことはやってこない」と思っている父 謙太郎、そして、息子 清人のご機嫌ばかりを取っている妻 真由子、この親子の日常は あくまでもうっとうしい。
1枚のダイビングのポスターがこの親子の日常に一石を投じる。
ダイビングというのは印象として、さわやかだし、「かっこいい」という感じだし、結末に向けての期待感を ひそかに高める。
あんのじょう、ダイビングを通して、清人と謙太郎、そして、真由子 - 親子の風景が変化する。
黒、灰色の世界が変わるきざしが描かれる。
清人が初めての 青い、青い海のダイビングで、父と母への土産として採ってきた白い貝。 親子の新しい絆の象徴だ。
やっぱり 泣いてしまいました。 「やったね」(!?)。
心と体が楽になりました。
さて恥ずかしながら、石田衣良(いら)さんは、あとがき で「僕」とかかれているのをみるまでは女の方だと思っていました。 無知ですみません、最後まで気づきませんでした。 蛇足ですが、本当です。
ポイント:
「もうこれから自分にはいいことはやってこないのだ。そう覚悟を決めて謙太郎は八方ふさがりの人生を受けとめていた。また、そうなってみると耐えることのなかにも、しびれるようなおかしさもあるのだった。盛りをすぎて、くだり坂になった人生を生きるおかさ。」
「謙太郎に希望はなかった。ただどこまで自分が耐えられるのか、その底を見極めたい。人生が自分にどれほどの悪意を見せるのか、最期まで見届けたい。マイナスばかりの決意が生きる支えになるなど、若かったころには想像さえできなかったことである。」
「……片足をなくした清人は、自分にとっての荷物などではなかった。……リストラ研修に耐える力が出せたのは、何よりも清人のおかげだった。清人がいなければ、自分の心はとうにおれていただろう」
誰もが、いや、中高年であれば、自分の姿、家族の有り様と重ねて、謙太郎、真由子、清人という親子の物語は 人ごとではない真実がある。
思わず、「そうだ」とうなづく。そして、我が身にひきよせ、 涙して しまうのだ。
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